浮世絵 豊国三代【曽我物語化粧坂乃條】
仮粧坂の下に美しき遊君が住んでおり、曽我五郎時致はこの女性に深い情けをかけていた。また一方、梶原景時の長男梶原景季も同様にこの美人の女性を憎からず 思い、仮粧坂の里に通っていた。ある日の事である、景季が他の男性の事にて彼女をからかった事から遊君は悲しみのあまり奥に引きこもり、それからは人前に出よ うとしなかった。それとは知らずに通って来た五郎時致は、彼女が奥に引きこもり出てこないので会うことが出来ない、困った曽我五郎時致は「 逢うと見る夢路にとまる宿もがな、つらき言葉に又も帰らん」と歌を書いた手紙を結び置いてそのまま帰った。
遊君は後でその歌を読み、大変に嘆き悲しみ、ついに出家をして諸国修行に出てしまった。最後は、五郎時致の兄・十郎祐成が情けをかけた大磯の虎御前の宅に住み天寿を全うした。