5.著作のこと

ラフカディオ・ハーンの見た鎌倉・江ノ島(総集編)

ラフカディオ・ハーンは1890年(明治23年)4月4日、横浜に到着後、間もなく鎌倉、江の島を訪れています。そのときのようすは、『Glimpses of Unfamiliar Japan(知られぬ日本の面影)』の「Chapter Four A Pilgrimage to Enoshima(第4 章江ノ島詣で)」の章に書いています。ここでは、その著作をガイドにハーンの足跡をたどります。
※この記事は「ラフカディオ・ハーンの見た鎌倉」シリーズと「ラフカディオ・ハーンの見た江ノ島」シリーズを合わせた総集編です)

ハーンと通訳のアキラは人力車で鎌倉、江ノ島を周りました。
(上の絵は、極楽寺坂を行く二人の様子を、AI(Bing Image Creator)によって描いた想像画です)

1.ラフカディオ・ハーンの見た鎌倉


ハーンのたどった推定ルート
注:あくまで、当ブログ著者が『Glimpses of Unfamiliar Japan』の記述から推定したルートです。

1.ラフカディオ・ハーンの見た鎌倉(1)― まえがき ―
 
 ラフカディオ・ハーン=小泉八雲=怪談と、何とな~く思っていた私が、彼の意外な側面を知った日。

2.ラフカディオ・ハーンの見た鎌倉(2)― 円覚寺 ―
 
 来日直後のハーンは、円覚寺ですでに「漱石」と遭遇していた?

3.ラフカディオ・ハーンの見た鎌倉(3)― 建長寺 ―
 
 ハーンは日本での著作のいたるところで地蔵菩薩を愛でています。建長寺は、その地蔵菩薩を本尊とするお寺でした。

4.ラフカディオ・ハーンの見た鎌倉(4)― 円応寺 ―
 
 閻魔大王と遭遇したハーンは、思わず後ずさり。仏教の知識があった彼の目に、地獄の大王は、どう映ったのか?

5.ラフカディオ・ハーンの見た鎌倉(5)― え? 鶴岡八幡宮に行ってないの? ―
 
 ハーンは鶴岡八幡宮について、まったく触れていません。鎌倉名所の筆頭である八幡宮をあえて無視したのはなぜか? この記事では、その謎に迫ります。

6.ラフカディオ・ハーンの見た鎌倉(6)― 大仏(高徳院) ―
 
 ハーンは大仏を「美しさと魅力に満ちている」と讃え、与謝野晶子は「美男におはす」と歌った……。

7.ラフカディオ・ハーンの見た鎌倉(7)― 長谷寺 ―
 
 ハーンの記した「観音の伝説」は、のちに『怪談(KWAIDAN)』に代表される再話文学の始まりだったのか?

8.ラフカディオ・ハーンの見た鎌倉(8)― 極楽寺坂切通し ―
 
 「極楽寺坂切通し」はトワイライトゾーン。ハーンがいずれ小泉八雲となってゆく異界へのトンネルだったのか?

そして、鎌倉を後にしたハーンは江ノ島に向かいます

 
 注:この絵はAI(Bing Image Creator)によって作成した想像画です。

2.ラフカディオ・ハーンの見た江ノ島


ハーンのたどった島内のルート

1.ラフカディオ・ハーンの見た江ノ島(1
 
 海と美の女神を祀る神の島、江ノ島上陸の感動をつづる。

2.ラフカディオ・ハーンの見た江ノ島(2)
 
 辺津ノ宮から中津ノ宮へ。
 ハーンの目には、何もかもがもの珍しく映ります。

3.ラフカディオ・ハーンの見た江ノ島(3)
 
 奥津ノ宮から稚児ヶ淵、岩屋(龍窟)へ。
 美の女神、弁財天を探し求めて島内を巡ったのですが……。

3.ラフカディオ・ハーンは鎌倉、江ノ島を巡って何を見たのか?

Glimpses of Unfamiliar Japan(知られぬ日本の面影)』は、日本人が読むことを目的にした著作ではなく、西洋の人々に向けて日本を紹介した紀行文です。

Glimpses of Unfamiliar Japan(知られぬ日本の面影)』

西洋近代文明に背を向け、東洋、特に日本の美に心酔するハーンは、日本人にしてみれば面映ゆくなるくらい日本を賞賛します。『Glimpses of Unfamiliar Japan』には、そんな日本の美観が次々と描かれてゆきます。まだ日本を見たことのない西洋の人々は、ハーンの美文に酔いしれることでしょう。しかし日本人の私が読むと、なぜ? どうして? と思うところが時々あります。

ラフカディオ・ハーンの見た鎌倉(5)」では、鎌倉を訪れることに胸を躍らせてやってきたハーンが、鎌倉名所の筆頭である鶴岡八幡宮について、ひと言も触れていない不思議(違和感)について考察しました。また、江ノ島では、美の女神と称して、弁財天像を求めて島内を周りますが、ついに探し当てることができませんでした。今ならば、私たちは、江の島へ行って、辺津宮の隣にある八角のお堂、奉安殿に行って拝観料200円を払えば、誰でもそのお像を見ることができます。二体ある弁財天像のうち、八臂弁財天(はっぴべんざいてん)は、源頼朝が奉納したものと伝えられており、ハーンが訪れた明治時代には、確実にあったはずです。

向かって右が八臂弁財天(はっぴべんざいてん)、左が妙音弁財天(みょうおんべんざいてん)

なぜハーンは弁財天像を見ることができなかったのでしょうか? それでも、「江ノ島詣で」の最後には、江ノ島を訪れることができたことに感動し、島の美しさ、素晴らしさを、褒めたたえています。弁財天像を見ることができなかった無念には触れず、清々しい文章で締めくくっていることにも、「あの好奇心の強いハーンが、どうして?」と思ってしまいます。『Glimpses of Unfamiliar Japan』には、いくつもの不思議、違和感があるのです。

そして、

ハーンはなぜ日本にやってきたのか?

なぜ日本に骨を埋めることになったのか?

その疑問を、私は小説『ラフカディオの旅で模索し、解き明かしたいと思っています。

※後日追記:ラフカディオの旅』を書き上げ、2月1日に出版しました。絶賛発売中です!


ラフカディオの旅』はコチラ

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