5.著作のこと

抑止力とは何なのか?

ヘルメットから戦車の供与へ ドイツ、難産の軍事支援(産経新聞)

 ドイツが苦渋の決断をしました。正直のところ、私も心の中で拍手している自分が疎ましいです。「ウクライナを支援したい」という気持ちは西側諸国の共通認識でしょう。しかしドイツは日本と同様、過去の戦争に悔恨の念を抱いている国です。そのドイツが最強の戦車を開発したのは、今、日本でも盛んに言われている「強い兵器を持てば抑止力になる」という理論でしょう。しかし、結局のところ「兵器は使われるためにある」ということに他ならない証明になってしまいました。
「抑止力」とは、いったい何なのでしょう。

 かつて、私は『ひぐらしの啼く時』という小説を書きました。今回のドイツの決定を知ったとき、物語の中で、軍人になろうとする誠二と、恋人の紀子が言い争うシーンを思い出し、紀子と同じように空しい気持になりました。

「強い軍艦を持てば、どこの国も攻めてこられなくなる。闘わなくて済むようにするんだ。もう昔の戦争とは違う。これからは技術戦なんだよ。相手よりも性能の高いものを造ることで戦争を防ぐんだ」
 相手より優位に立って交渉する。これからの国は技術力と外交が重要となる。表舞台に立つのが外交官ならば、自分は舞台装置を担う技術者になるのだ。
「どんな道具だって、持っていればいつか使うことになるのよ」
 紀子はそう言って誠二に向けた顔を前にもどす。そして、「今までだって、みんなそうだったじゃない」と、小さく、ぽつりとつぶやいた。その顔は言葉で説得することの限界と空しさに、諦めの色を浮かべているかに見えた。


ご紹介はコチラ

その他の著作一覧はコチラ


ピックアップ記事

  1. 竜の棲む岬
  2. ひぐらしの啼く時
  3. 【連載小説】『俥曳き俊輔の逡巡』(全話)
  4. オリンポスの陰翳
  5. 【連載小説】『かつて、そこには竜がいた』全話

関連記事

  1. 5.著作のこと

    【連載小説】春を忘るな(17)

    この記事は前回からの続きです。■これまでの全文はコチラ。■前…

  2. 5.著作のこと

    【連載小説】春を忘るな(12)

    この記事は前回からの続きです。■これまでの全文はコチラ。■前…

  3. 5.著作のこと

    【連載小説】春を忘るな(15)

    この記事は前回からの続きです。■これまでの全文はコチラ。■前…

  4. 5.著作のこと

    ひぐらしの啼く時

    ■あらすじ祐輔は学生時代のサークル仲間、のり子と再会。かつては気にも…

  5. 5.著作のこと

    『オリンポスの陰翳』電子書籍化決定!

     新型コロナウイルス緊急事態による外出制限でご自宅に巣籠もりされてい…

  6. 5.著作のこと

    『オリンポスの陰翳』神奈川新聞書評

     7月26日の神奈川新聞「かながわの本」で『オリンポスの陰翳』を書評…

  1. 2.江ノ島のこと

    江ノ島に架ける橋
  2. 5.著作のこと

    オリンポスの陰翳
  3. 2.江ノ島のこと

    江ノ島ヨットハーバーの今昔
  4. 1.鎌倉のこと

    切通し No.0 -釈迦堂口-
  5. 5.著作のこと

    『金星が見える時』「まえがき」に代えて(1)
PAGE TOP