日本の古典に登場する「赤気」は多くの場合オーロラです(彗星の場合もあるらしい)。
オーロラは、高緯度の極地では緑色に見えることが多く、日本など低緯度で稀に見えた時は赤くなるようです。
藤原定家『明月記』の建仁四年正月十九日(1204年2月21日)条および同月廿一日(2月23日)条には、京都で「赤気」を見て恐れを抱いたことが記されています。
【原文】
秉燭以後、北并艮方有赤気、其根ハ如月出方、色白明、其筋遙引、如焼亡遠光、白色四五所、赤筋三四筋、非雲、非雲間星宿歟、光聊不陰之中、如此白光、赤光相交、奇而尚可奇、可恐々々
【訳文】 燭台に燈をともす頃(日が暮れてから)、北及び東北の方向に赤気が出た。その赤気の根元のほうは月が出たような形で、色は白く明るかった。その筋は遠くに続き、遠くの火事の光のようだった。白気(白いところ)が4、5箇所あり、赤い筋が3、4筋出た。それは雲ではなく、雲間の星座でもないようだ。光が少しも翳ることのないままに、このような白光と赤光とが入り交じっているのは、不思議な上にも不思議なことだ。恐るべきことである。
この『明月記』の記述がオーロラであることを裏付けたとする論文を、国立極地研究所や国文学研究資料館などのチームが米地球物理学連合の学術誌に発表しています。チームは、過去2000年の京都の地磁気の状況を計算。当時は地磁気の軸が現在とは異なり、日本でオーロラが観測しやすい状況だった、としています。