『東関紀行』の「大仏」の記述


(前文略)その外由比の浦と云ふ所に阿彌陀佛の大佛をつくり奉るよし、語る人あり。やがて誘ひて參りたれば、尊く有難し。事の起りを尋ぬるに、本は遠江の國の人、定【淨歟】光上人といふものあり、過ぎにし延應の頃より、關東の高き卑しきを勸めて、佛像を造り、堂舍を建てたり。その功すでに三が二にをよぶ。烏瑟たかくあらはれて、半天の雲に入り、白毫あらたにみがきて、滿月の光を燿かす。佛はすなはち兩三年の功すみやかになり、堂は又十二樓のかまへ望むにたかし。彼の東大寺の本尊は聖武天皇の製作金銅十丈餘の廬舍那佛なり。天竺震旦にもたぐひなき佛像とこそきこゆれ。此の阿彌陀は、八丈の御長なればかの大佛の半よりもすゝめり。金銅木像のかはりめこそあれども、末代にとりては是も不思議といひつべし。佛法東漸の砌にあたりて、權化力を加ふるかと有難くおぼゆ。(後文略)

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