雨過天晴に想う
「雨過天青」を辞書でひくと「雨がやんで空が晴れる意から、芳しくない事態が好転すること」としか出ていませんが、「青磁」の色を表す意味もあるんです。中国の五代十国時代(十世紀)、後周の皇帝、柴栄(さいえい)が「雨過天青雲破処(うかてんせいくもやぶれるところ)の器を持ち来たれ」、つまり「雨がやんで、雲の隙間から見える青空のような色の器を造って持って来い」と言って、陶工に作らせたのが「青磁」でした。私は、この青磁という器が、とても好きで、じつは、この逸話を小説『ひぐらしの啼く時』の中で、引用したこともあって、とりわけ思い出深いのであります。
「雨過天青雲破処」て、どんな色だと思います? 「目の覚めるような青空」という人もいるけど、私は、まだ雲がかかってくすんだ色の青ではないかと思っています。青磁って、そんな色ですから……。『ひぐらしの啼く時』を書いているときは、そんな色を目に浮かべながら書きました。