雨過天青

雨過天晴に想う


「雨過天青」を辞書でひくと「雨がやんで空が晴れる意から、芳しくない事態が好転すること」としか出ていませんが、「青磁」の色を表す意味もあるんです。中国の五代十国時代(十世紀)、後周の皇帝、柴栄(さいえい)が「雨過天青雲破処(うかてんせいくもやぶれるところ)の器を持ち来たれ」、つまり「雨がやんで、雲の隙間から見える青空のような色の器を造って持って来い」と言って、陶工に作らせたのが「青磁」でした。私は、この青磁という器が、とても好きで、じつは、この逸話を小説『ひぐらしの啼く時』の中で、引用したこともあって、とりわけ思い出深いのであります。

「雨過天青雲破処」て、どんな色だと思います? 「目の覚めるような青空」という人もいるけど、私は、まだ雲がかかってくすんだ色の青ではないかと思っています。青磁って、そんな色ですから……。『ひぐらしの啼く時』を書いているときは、そんな色を目に浮かべながら書きました。


ひぐらしの啼く時 ご紹介記事はコチラ

  1. 1.鎌倉のこと

    中世鎌倉の港湾遺跡をドローンで空から撮影しました! ―『春を忘るな』の周辺(7)…
  2. 1.鎌倉のこと

    源実朝の謎(1) これが実朝の墓?
  3. 5.著作のこと

    森園知生の著作一覧
  4. 2.江ノ島のこと

    江ノ島ヨットハーバーの今昔
  5. 5.著作のこと

    ラフカディオ・ハーンの見た鎌倉・江ノ島(総集編)
PAGE TOP