5.著作のこと

南鳥島が核のゴミ捨て場に?

南鳥島が放射性廃棄物の最終処分場候補地に?

昨今、レアアース資源の話題で名前を聞く機会が増えた南鳥島。太平洋に浮かぶその姿は、まさに「孤島」と呼ぶにふさわしい島です。東京の南東約1,950kmに位置する日本最東端の島であり、一辺約2kmの三角形をしたサンゴ礁の小島です。

海上自衛隊や気象庁の職員など、約20名が常駐していますが、一般人が立ち入ることはできません。そんな島が今、放射性廃棄物(いわゆる「核のゴミ」)の最終処分場の候補地として調査対象になったという報道がありました。

放射性廃棄物処分の現状

国内の原子力発電所から出る使用済燃料は、各地の施設で一時的に保管されています。しかし、その貯蔵プールはすでに満杯に近づいています。2025年12月1日の日本経済新聞でも、「核のごみ」対応が急務であり、最終処分の実現にめどが立っていないと報じられています(※)。原子力発電を続ける限り、核のゴミは出続けます。ところが最終的な行き場が決まっていないのです。
※「核のごみ」対応急務 最終処分、実現めど立たず

日本経済新聞社


新潟日報

最終処分場はなぜ必要か?

どこかに封じ込めるしかない核のゴミ

最終処分場とは、高レベル放射性廃棄物数万年の間、安全に隔離する施設です。諸外国で一般に採用されているのは「地層処分」と呼ばれる方法で、地下深くの安定した岩盤に埋設する方法です。放射性廃棄物は、数万年にわたり放射線を出し続け、人体や環境に影響を及ぼす危険なものだからです。
(ウンチや小便は自然分解しますが核のゴミは数万年かかる、ということです)
私自身は、原発依存には否定的ですが、これまで排出してしまった廃棄物は、何らかの形で処分しなければならないという現実から逃れることはできません

なぜ南鳥島が候補地に?

ではなぜ、南鳥島なのか?
最終処分場に求められる条件は、

・地質が長期的に安定している
・地下水の流れが極めて遅い
・外部からの影響を受けにくい

といったものです。
代表的な成功例が、フィンランドのオンカロです。
ここでは、地下約500mの安定した花崗岩層に廃棄物を埋設する計画が進んでいます。

オンカロ最終処分場の工事計画図(ポシヴァ社)


オンカロの坑道は硬い花崗岩盤層を掘削してできている

一方、南鳥島はサンゴ礁で、もとは環礁だったものが、水没して現在の地形になったと考えられています。(東京都総務局)
率直に言って、私のような素人の直観でも、「南鳥島が適している」とは思えません。
サンゴ礁由来の石灰岩は多孔質(つまり硬いスポンジ)で、地下水が海水と入り混じる状態。

島を囲むサンゴ環礁は島全体がサンゴ礁でできているのを伺える

サンゴ礁由来の多孔質石灰岩

また、島自体が非常に小さいため、海水が入りやすく、閉じ込める構造になっていません。長期的な安定性にはおおいに疑問があります。日本のEEZ(排他的経済水域)内とはいえ、放射能を含んだ物質が海洋に流れ出せば、大きな国際問題となるでしょう。

それでも調査するのは?

ではなぜ、このような場所を調査するのか? 考えられる理由といえば、本土から遠く離れていて、一般人の居住区域でない。だから反対運動等が起きにくい。これは最大の利点といえるかもしれません。つまり、「最適だから」ではなく、「検討可能な数少ない選択肢」ということでしょう。裏を返せば、一時保管施設が限界に近づいているにもかかわらず最終処分場が決まらないことに焦り、「候補地を挙げるだけでも」という切迫した状況で、たまたま?レアアース調査で得られたデータがある。だったら、たとえ交付金が20億円かかっても文献調査だけでもやってみよう、ということなのでしょう。それほど日本には最終処分場の適地がなく、切羽詰まった状況なのです。
しかし……。


『2022年11月17日朝日新聞「核のごみ」処分場はどこへ 北海道の2町村に続く自治体なく』より

精密調査が終了するまで20年?!
処分場建設にはさらに年数が掛かるでしょう。
一時保管施設満杯になるまでにはとても間に合わないですね。

それでもまだ原発に依存するのか?

私自身も電気の恩恵にあずかってきました。その電気の中には原発由来のものも相当量あったでしょう。過去を否定することはできません。しかし、これだけ処分場に苦慮している状況で、今後もなお原発に依存し、核のゴミを出し続けてよいものでしょうか?

あらたなエネルギーの可能性

私は、拙作『金星が見える時』という小説で、原子力発電に代わる新たなエネルギーとして深層の地熱発電に注目し、その開発を目指す若者たちの物語を描きました。


地下の深層には無尽蔵の地熱エネルギーがある

現在、ホルムズ海峡経由の石油をはじめ、海外資源への依存が大きな問題となっています。にもかかわらず、100%国産エネルギーである深層地熱の開発研究がなぜ進まないのか――その背景と構造的な問題について、本作の中で掘り下げています。
 注)原子力発電の燃料であるウランも100%輸入です。


金星が見える時

近年、いわゆるフュージョン・エネルギー(核融合)が注目されています。燃料となる重水素は海水中に無限に近く存在するため、その抽出に成功すれば、将来的な資源枯渇の懸念がほとんどなく、安全でクリーン(CO2排出なし)という利点を持つベースロード電源として期待されています。しかし、まだまだ研究段階で実現時期は不確定です。そして、どんなにすばらしいエネルギーであっても、それだけに依存するのは大きなリスクであることを、昨今のホルムズ海峡問題が示しています。

ホルムズ海峡封鎖、台湾有事でオイルロードが寸断されれば……


南鳥島のニュースは、最終処分場候補地の問題だけではなく、エネルギー政策の行き詰まりを象徴し、その現実を改めて突きつけているように思えます。

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