5.著作のこと

『金星が見える時』「まえがき」に代えて(2)

※『金星が見える時』「まえがき」に代えて(1)はコチラ

■再生可能エネルギー社会!


 この言葉には、原発にも火力にも頼らないクリーンで安全なエネルギー社会というイメージがあり、素晴らしい未来を感じさせてくれます。


注)当記事では「再生可能エネルギー」を「自然エネルギー」という言葉で統一します。

■でも自然エネルギーにも課題はあります

・太陽光発電

 
 古代から恩恵を受けてきた太陽の恵みをもっと活用したらいいじゃないか!
 そのとおりですよね。でも、お日様は曇りや雨の日は出てきてくれません。夜もお休みします。「今日は雨なので電気使えません」では困ります。一定の発電量を維持するベースロード電源とはなり難いですね。
 また、最近は、メガソーラー問題というのも起きています。広大な山肌から草木を削り取って太陽光パネルで覆ったために土砂崩れ災害が起きています。

 そもそも太陽光発電は土地利用の一つです。他の利用に代えて利用するものです。安全性も含めて、その土地の利用法として宅地がよいのか、農地か森林か工場か? あるいは電力生産地とするのか? どの使い道が安全で効率的か、付加価値が高いのか? その前提には太陽光パネルの耐用年数が20~30年であることも考慮する必要があります。初期投資に対して20~30年でどれだけの価値(発電量)を生むのか? そしてパネルを廃棄する費用はどれくらいかかるのか? 廃棄費用もコストに算入すべきでしょう。そのうえで検討したら「畑にした方がいいんじゃないの?」となるかもしれません。
 もし、太陽光パネルを人工衛星などで宇宙空間に設置できれば(あるいは月面?)、土地や天候の問題は解決できますね。でも宇宙から地球上に送電する問題が残ります。家の屋根にパネルを設置して家庭電源の補助とするのは有効かもしれません。

・風力発電
 ヨーロッパのオランダやスペインでは古くから風車を動力源として活用してきました。でも風が吹かなければダメで、太陽光と同じようにベースロード電源にはならないでしょう。そして風力発電の風車には、シャドウフリッカーという問題があります。

シャドウフリッカーが起きるイメージ絵(出典:環境省)

 風車の羽根が断続的に太陽光を遮り、目まぐるしく明暗が繰り返すとどうなるでしょう。窓から射し込む陽の光が、一日中チカチカ点滅したらたまりませんよね。シャドウフリッカーによる健康被害も出ているようです。ですから風車は人家の近くには建てられません。遠浅の海洋や山の上などで安定した風が吹く場所に限られます。

 また、風車はメンテナンスにそうとうの費用がかかります。人力による保守作業になりますので危険でもあり高コストになるでしょう。


高所恐怖症の人は作業員になれませんね (||゚Д゚)

・水力発電

 ダムによる水力発電は、自然エネルギーの中でも歴史の古いものです。『黒部の太陽』という映画をご存知の方は(私も含め(;^_^A)、それなりの年齢のはずです。
 でも、ダムを建造するために山間の大きな谷を水没させるため、人の住んでいる村や森林を消滅させてきました。

 また、ダム湖に土砂が溜まり、河川への流出を止めてしまうため、海岸への砂の供給が絶たれ、海浜浸食の一因にもなっていました。

このように、クリーンで環境に優しいイメージのある自然エネルギーにも多くの課題があります。

■火力発電は?

 日本の高度成長を担ってきた発電システムは、何と言っても「火力」でしょう。しかし、昨今ではCO2排出の戦犯になってしまいました。そして、資源の乏しい日本は、燃料資源を海外に頼らざるを得ず、国際情勢が不安定になるたびに弱い立場に立たされてきました。(資源の争奪は、戦争の原因にもなっていました) 


資源の乏しい日本の弱みにつけこむ?


資源の海上輸送には国際紛争が絡む

そして、何より化石燃料の枯渇により未来永劫火力に頼ることはできません。

■やっぱり原子力発電?


(出典:経済産業省)
東日本本大震災前は、かなり原子力に頼っていました。


(出典:経済産業省)
震災後は、原子力の危険性が認識され、原発を停止し、火力に頼らざるを得なくなりました。
 注)上の円グラフ(現在)は、2012年11月時点(震災の翌年)のもので、現在は、自然エネルギーの比率も20%近い。


菅総理「脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言します!」


岸田現総理「設置許可済みの原発再稼働について、国が前面に立って、あらゆる対応を取ってまいります」
 脱炭素で火力が駄目なら原子力しかないですよね、という論法です。
 じつに見事なバトンリレーです。(10年は~ひと昔~♬(陽水風に)。時が全てを洗い流す?)
 私、個人としては、あの、東日本大震災、福島第一原発事故の痛み、故郷を失った人々の気持ちを忘れたのか?! と言いたいところです。

帰宅困難区域は今も……。
(出典:NHK)
けれど、「原発の危険性は科学技術で安全対策できる」ということなのでしょう。たしかに人間は科学技術を進歩させてきました。決して後もどりすることなく、前に進み続ける、ということでしょう。そうかもしれません。しかし、原子力の最大の問題は、安全性もさることながら、使用済み燃料の廃棄処分ができないことで、いまだ解決の目途も立っていません。

(出典:毎日放送)
 使用済み燃料は、自然界に存在するもとのウラン鉱石と同じ程度の放射能レベルに下がるまで10万年かかります。現在は、各原発のプールで一定の温度まで下げ、その後特殊な容器に入れ、中間貯蔵庫(地下に埋め、厚さ2メートルのコンクリートで覆う)に仮置きし、数十年後に地下数百メートルの最終処分場に埋める、とされていますが、火山噴火、地震、地殻変動に影響されない場所が日本国内に見つからず、また受け入れてくれる自治体もなく、問題先送りの状態が続いています。使用済み燃料プールや中間貯蔵庫にある間に地震や火山噴火があったらどうなるのでしょう。そして原発を稼働させている限り、使用済み燃料は、今も増え続けているのです。

■本当に原子力しかないのでしょうか?

 もろもろの課題はあるものの、自然エネルギーはクリーンで安全です。しかし私は、それだけで現在の電力需要を賄えるとは思っていません。では原子力なのか? その答えを見つけるために『金星が見える時』を書きました。
 あ、でも、この記事のような「エネルギー問題を論じたもの」ではありません。東日本大震災から47年後の近未来の鎌倉を舞台に、若者たち、恋人たちが織り成す青春物語です。ぜひ読んでみていただきたいと思います。(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾


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