洋上風力発電から三菱商事撤退
先日(2025年8月30日)、再エネ期待派としてはショッキングなニュースが入ってきました。三菱商事を中心とする企業連合が、秋田県や千葉県沖の3海域で進めていた洋上風力発電事業から撤退するとのこと。建設コスト高騰で採算が見込めなくなったという理由のようです。
もともと三菱商事は、政府が行った入札で「安過ぎる」と言われた落札価格で、参加した他の企業グループを押しのけて3海域すべてを落札し、当時大きな話題となりました。落札価格が挑戦的過ぎたのか、物価上昇の見通しが甘かったのか、いずれにしても残念です。
ニュースのコメントでは、洋上風力発電は、脱炭素社会に向けた再生可能エネルギー拡大の『切り札』だっただけに、今回の撤退表明で、今後の日本のエネルギー戦略に暗雲が漂っているとのことです。当ブログでも、3年前の記事で風力発電への懸念については言及していました。➡3年前の記事
水力発電
日本の自然エネルギーの先駆であり、CO2排出量が少なく、昼夜、天候に左右されずに安定した電力供給が可能なクリーンエネルギーとして重要な役割を果たしてきました。しかしダム湖に土砂が溜まり、河川への流出を止めてしまうため、海岸への砂の供給が絶たれ、海浜浸食の一因にもなっていました。また、ダムの建設には山間部の自然や山村に大きな犠牲を強いてきたことも事実。再生可能エネルギーとしては、今以上の期待はできないでしょう。➡3年前の記事
太陽光発電
太陽光発電は太陽の恵みを利用したクリーンエネルギー。でも、そこにはさまざまな課題のあることを3年前の記事に書きました。➡コチラ
風力発電撤退に続き「太陽光パネルのリサイクル断念 コストに課題」という記事が飛び込んできました。
政府は、太陽光パネルの製造業者にリサイクルを義務付ける制度の導入を断念することを明らかにしました。太陽光パネルの埋め立て処分とリサイクル費用の差額が大きいため、製造業者にリサイクルを義務化し価格負担を強いることは難しいとの判断とのこと。つまり、リサイクルのコストが高いので埋めてしまった方が安上がりだというのです。これではとてもクリーンエネルギーとは言えません。
やはり原子力発電?
どうも昨今の流れが、そう言ってるように聞こえてしまいます。まさに当ブログで3年前に懸念していたことです。➡コチラ
菅首相(当時)の脱炭素社会宣言は聴こえのいい響きがあります。でも明らかに原発再稼働をにらんだものです。
その証拠に次の岸田首相(当時)が再稼働を宣言。みごとなバトンリレーでした。
今回の風力発電撤退、太陽光発電の後退も、そんな流れの中にあるのでは? と勘ぐってしまいます。
本当に原子力発電しかないのでしょうか?
原子力発電は、東日本大震災の福島第一原発事故のように危険であることは言うまでもありませんが、それにとどまらず何より問題なのは、いまだに使用済み核燃料の処分方法が解っていないのです。使用済み核燃料は、自然界に存在するもとのウラン鉱石と同じ程度の放射能レベルに下がるまで10万年かかります。現在は、各原発のプールで一定の温度まで下げ、その後特殊な容器に入れ、中間貯蔵庫(地下に埋め、厚さ2メートルのコンクリートで覆う)に仮置きし、数十年後に地下数百メートルの最終処分場に埋める、とされていますが、火山噴火、地震、地殻変動に影響されない場所が日本国内に見つからず、問題先送りの状態が続いています。使用済み燃料プールや中間貯蔵庫にある間に地震や火山噴火があったらどうなるのでしょう。そして原発を稼働させている限り、使用済み核燃料は、今も増え続けているのです。
そんな原子力に頼らない、あらたな再生可能エネルギー社会を模索するために、『金星が見える時』を書きました。読んでいただければ嬉しく存じます。