原発は段階的廃止ではなかったのか?
原発は、絶対必要と考える人、絶対反対の人、いずれは脱原発すべきだが代替エネルギーが確立するまでは稼働させざるを得ないと考えている人、好ましくないが原発は止められないと考える人、等々、さまざまです。と言うと、「ああ、原発の話なんだ」と思われるかもしれません。半分そうですが、半分は違います。もう半分は何か? それは読んで感じていただけれると嬉しいです。
石油、天然ガスなどの化石燃料が限られた資源であること、そして世界的にCO2削減が叫ばれるようになり、日本のエネルギーは火力発電から原子力発電に切り替わりつつありました。
ところが2011年の東日本大震災による福島第一原発の事故で、原発は危険なものという認識が広まり、いったんすべての原発が停止しました。
しかし菅総理が「脱炭素社会の実現」を宣言したとき、あ、原発を再稼働させようとしているな、と思いました。CO2を出す火力発電に、いつまでも依存できない。かといって自然エネルギーだけでは電力需要を賄えない。「じゃ、どうするか? 原発再稼働しかないでしょう!」という、林先生式論法です。
そしてウクライナ紛争が起き、ロシアの天然ガス供給が不安定になり、サハリン2が国有化される前後から、菅政権の跡を継いだ岸田総理は原発再稼働を公言するようになりました。
原発は再稼働のみならず新増設の動きも加速するでしょう。そして「原発推進」と「脱原発」のイデオロギー対立は、ますます深まるでしょう。ならば、それぞれが是とする道を歩めるよう住み分ける世界を設定し、その物語の中で、新たなエネルギー社会をシミュレーションしてみたのが『金星が見える時』です。
物語は東日本大震災から47年後。近未来の若者たち、恋人たちが、原発推進州と脱原発州に分断された社会の狭間で揺れながら未来を模索します。ここから先は、下リンク先の「本の内容紹介」をご覧ください。(無料で試し読みもできます)