5.著作のこと

殉教の旅(4)― 長崎・五島(その3) ―

三島縦断クルーズ

久賀島奈留島若松島については、交通手段などに難があるため、ツアーに参加することにしました。(五島地図

久賀島


福江港を発ち、久賀島田ノ浦港着。マイクロバスに乗ってツアー出発。
ツアーガイドさん(おそらく私より年配の地元男性)によれば、久賀島の人口は約200人とのこと。島の面積では五島列島中3番目の大きさなのにスーパーマーケット等は無く、毎週船で福江島に買い出しに行くそうです。(驚き!) そして、久賀島中学は全校で現在10人。内9人が島外からの「留学生」とのこと。過疎の島なのです。

③牢屋の窄殉教記念聖堂


最初の訪問地は牢屋の窄(ろうやのさこ)殉教記念聖堂
1868年(明治元年)、自らの信仰を告白した久賀島のキリシタンたちが捕えられ、12畳ほどの牢屋200名あまりが押しこめられた。畳1枚あたり17人という想像を絶する状況。横になることもできず、排泄もその場にしなければならないという惨状。信徒たちは8ヵ月にわたりこの状況を耐えたが、飢えなどから39名が死亡出牢直後3名が死亡。その殉教の地に建てられたのが牢屋窄(ろうやのさこ)殉教記念教会。


殉教者たちの碑がずらりと並んでいます。


碑文は、
「パウロ助一 七十九歳 最初の窄死者 □□のため窒息死」
「ドミニカたせ 七十一歳 蛆にした腹をかまれて死亡」等々、凄惨……。
なにしろ12畳ほどの牢屋200名畳1枚あたり17人ですから、踏みつぶされて圧死した人もいたようです。棄教すればすぐに開放されるのに……。棄教せず死んでゆく……。「棄教せずに死ねば天国(パライソ)に行ける」。その想いだけで信仰を続ける「殉教」とは……。私にはわかりません。

この弾圧は明治元年のことです。禁教令が解かれてキリスト教禁止の高札が撤去されたのは明治6年(1873)。じつは、明治になってからの弾圧の方がより激しくなったようです。おそらく「信徒発見」以降、潜伏していたキリシタン達が次々と信仰を告白する中で、明治政府神仏分離令(実質的には神道優位政策)を発布。江戸幕府にかわって、今度は明治政府による弾圧だったのです。明治6年の高札撤去は西洋諸国からの非難を受けて(しかたなく?)の政策変更。禁教政策は、明治22年(1889年)に発布された大日本帝国憲法によって、ようやく真の終止符が打たれたのでした。


聖堂からの眺め。
こんな美しい風景の中で……。

④五輪地区(ごりんちく)

(長崎県文化観光国際部観光振興課パンフレットより)
マイクロバスにて、TVの「ポツンと一軒家」に出てくるような、地元民でないと絶対にすれ違い不可能な山路を往くも、ついに自動車では入れない地点に到達。ここからは山路を歩かねばならない。(上絵図右下進入禁止マークの場所)


ガイドさんを先頭に、密林のような山路へ入ってゆきます。


山路にはイノシシの足跡が……。


奈留(なる)瀬戸五輪地区が見えてきました。


ガイドさんによれば、なんと、あのシンガーソングライターの五輪真弓さんのルーツは、この五輪(ごりん)地区だそうです。(ご本人は東京生まれですが、敬虔なカトリック信徒)
なので五輪(いつわ)か……。そして、ガイドさんによれば、ここに御親戚の家があったのだそうです。
五右衛門風呂の残骸がありました。


遠方に五輪教会が見えてきました。


さあ、あと少し。


ここも、入り江(浦)の美しい風景の中に素朴な教会がたたずんでいます。左が旧五輪教会。右が(新)五輪教会。



険しい山を背景に、奈留(なる)瀬戸に面した小さな漁港のわずかな土地に、新旧の五輪教会が並んで建っています。こちらは(新)五輪教会。


旧五輪教会を水彩画風にしてみました。この方が、写真より実際のイメージに近いので……。


集落の猫が出迎えてくれました。五島の猫は、みな人懐こくすり寄ってきます。

それでは旧五輪教会の中に入ってみましょう。

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■殉教の旅(1)(2)(3)

殉教の旅(1)ー鎌倉に残る隠れキリシタンの跡ー
殉教の旅(2)― 東慶寺に残るキリシタンの痕跡 ―
殉教の旅(3)― 澤田美喜記念館 ―

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