5.著作のこと

「核のごみ」対応急務 最終処分、実現めど立たず

今ごろ何を言ってるのでしょうか?

と思ってしまいますが、まずは2025年12月1日 の日本経済新聞朝刊の記事を抜粋・要約してご紹介します。(以下、青文字)

「核のごみ」対応急務 柏崎刈羽・泊で原発再稼働容認 再利用・最終処分、実現めど立たず

新潟県の柏崎刈羽6~7号機、北海道の泊3号機と東日本の主要な原子力発電所で地元の知事による再稼働容認の表明が相次いだ。火力より安価で、再生可能エネルギーより安定した電源との期待がある。原発の利用拡大は核燃料の「後工程」の問題を避けて通れない。停滞する再利用や最終処分といった政策課題を前に進める必要がある。

(中略)

原発を動かす場合、使用済み核燃料の扱いが問題になる。電力各社は敷地内のプールに一時的に保管している。そのスペースには限りがある。


東京電力ホールディングスの柏崎刈羽原発6~7号機は既に貯蔵率が8割を超えている。再稼働後、対策を打たなければ数年で満杯になる。当面、運転の計画がない1~5号機のプールに分散し、時間を稼ぐ。24年からは子会社が青森県むつ市で運営する中間貯蔵施設への搬入も始めた。あくまで一時保管との位置づけで、貯蔵は最長50年だ。

政府は使用済み燃料からウランやプルトニウムを取り出し、再利用する核燃料サイクルを基本政策とするが、現状は看板倒れだ。サイクルは回り始める前の段階で足踏みしている。ウランなどを回収する再処理も、その際に生じる高レベル放射性廃棄物(核のごみ)を地下深くに埋める最終処分も実現していない。要となる日本原燃の再処理工場は青森県六ケ所村で1993年に着工した。当初は97年にできあがる予定だった。相次ぐ事故やトラブルなどでこれまで27回の延期を重ね、ずるずる遅れている。

最終処分場の候補地選びは文献調査の段階にとどまる。この最初期の調査でさえ、受け入れたのは北海道の寿都町と神恵内村、佐賀県玄海町の3町村のみだ。経済産業省は文献調査が終わった寿都町と神恵内村について次のステップへの移行を目指している。実際に地層や地下水などの状況をチェックする概要調査だ。現時点では北海道の鈴木直道知事が反対の姿勢で、進展は見通せない。

資源に乏しい日本はエネルギー安全保障上、原子力への期待が大きい。2011年の東日本大震災で起きた東電福島第1原発の事故を経て、いったん国内の全ての原発が停止する事態になった。その後、地震や津波への対策強化などを定めた新規制基準の下、少しずつ再稼働が広がってきた。ウクライナ危機以降の資源高や、人工知能(AI)の普及による電力需要の増大などで世界的にも原子力を再評価する流れにある。核のごみの難題とも改めて正面から向き合う局面にきている。
(以上、2025年12月1日 の日本経済新聞朝刊の記事より)

原子力発電の根本的な問題

使用済み核燃料(核のゴミ)の放射能が人体に影響しないレベルになるには10万年はかかると国際的に見積もられています。しかし、記事の中でもさらりと触れていますが、原子力発電で排出される使用済み核燃料の処分方法はいまだに解決できておらず、「ゴミ」は溜まる一方なのです。

記事中の「使用済み核燃料の貯蔵率」の通り、全国の原発の貯蔵プールは満杯に近づいています。プールで一定以下に温度が下がれば、青森県むつ市の中間貯蔵施設に移せますが、あくまで一時保管場所で、その間に地震、津波で破壊されれば大量の放射能が拡散する事故になります。貯蔵プール保管中に地震、津波の被害を受ければ、さらに甚大な事故になることは言うまでもありません。(悪意のドローンやミサイル攻撃があれば一発で……)

使用済み核燃料からウランやプルトニウムを取り出し、再利用する核燃料サイクルは実現できずに足踏み状態です。

放射性廃棄物を地下深くに埋めることを「最終処分」と称してますが、受け入れる自治体選びも難航しているとのこと。ヨーロッパなどは安定した硬い岩盤層があって地下処分も可能かもしれませんが、火山、地震の多い日本では、そんな条件の揃うところは、ほぼ皆無。誰が好き好んで危険な核のゴミ処分場を受け入れるでしょうか。危険を受け入れる代わりに補助金等の利益を受けるということでしょうか? そんな博打のような受け入れを、自治体の長は住民にどのように説明するのでしょう。

最終処分場のイメージ図

今回の日経記事のような事態になることは、今わかったことではありません。すでに数十年前から言われていたことで、少なくとも東日本大震災の時には広く認識され、一時はすべての原発が停止しました。ところが、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」で、原発は次々と再稼働することに……。
(当ブログでも3年前、そのことを書きました。➡ 『金星が見える時』「まえがき」に代えて(2)

原発再稼働はしかたない?

現在の電力事情を考えれば、「それもしかたない」と思えてしまうかもしれません。しかし、ゴミ捨て場が満杯になってから、場当たり的な対応に逃げるのではなく、もういちど原点に立ち返ってエネルギー政策を見直してみてはどうでしょうか? 日本は、石油も核燃料も輸入に頼っています。その供給が止まったら……。戦争が起きる原因の多くは資源供給の確保、争奪から始まっています。今、問題になっている台湾有事だって南シナ海の海上輸送ルートが背後にあるのです。もし、エネルギー資源を自国で完全に自給できれば、それだけで戦争のリスクを大きく減らせるのです。そして100%自国で供給可能な、無尽蔵ともいえるエネルギーはあります。そんな素晴らしいエネルギーがあるのに、なぜ開発が進まないのか?

そんな想いから、私は3年前に『金星が見える時』を書きました。
昨日の日経新聞に、今回ご紹介の記事が出たことで、あらためて多くの方に読んでいただければ嬉しいな、と思いました。


金星が見える時コチラ

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