1.鎌倉のこと

『かつて、そこには竜がいた』連載開始にあたって

 稲村ヶ崎といえば何を思い出しますか?
 新田義貞の鎌倉攻め? 後醍醐天皇の鎌倉幕府追討の令旨を受けて、はるばる上野国で挙兵し、最初は苦戦したものの、義貞が稲村ヶ崎から黄金の剣を投げ入れると、『モーゼの十戒』のごとく、みるみる潮が引いて鎌倉に攻め入り、北条軍を討伐した、というアレを思い浮かべる人が多いでしょう。けれど、「七里ヶ浜の~磯づたい~♬ 稲村ヶ崎名将の~剣投ぜし古戦場~♬」という歌を口ずさめる人は、もう少なくなったでしょうね。

 サーフィンをやる人達なら「稲村クラシック」でしょうか。日本有数の大波スポットで台風の大波が来た時だけ開催され、レジェンド達の「お目」にかなう至高の大波が来なければ、その年は開催中止。その後24年間、毎年中止が続いた期間もあったという伝統の、というかプライドの塊みたいなサーフィン大会です。

2016年稲村クラシックのポスター


24年ぶりに開催された“稲村クラシック 2013”の優勝者、大橋海人

でも、「この稲村ヶ崎にはこんな歴史もあるんです」と、このブログでご紹介したのが、「稲村ケ崎(2)-謎の洞窟-」です。(2020年1月25日公開)

「稲村ケ崎(2)-謎の洞窟-」はコチラ

 まさに太平洋戦争の爪痕が、この稲村ヶ崎にもあるのです。
 毎年、終戦の日(8月15日)が近づくと、テレビや新聞で終戦特集が組まれます。戦後70年以上も経つのに、それは変わりません。おそらく、その作り手(語り部)たちも、私と同じように、あの戦争を知らない世代に置き換わりつつあるでしょう。それでも、あの戦争があったことを忘れることなく、胸に刻み、後世に伝える作業、作品が途切れることなく続いていることに安堵すると同時に、いつまでも続くことを願ってやみません。そして、私もその一端に関わり続けてゆきたいと思い、稲村ヶ崎を舞台に『竜の棲む岬』という小説を書いたことがありますが、まだ出版できていません()。『春を忘るな』のように、このブログでご紹介することも考えましたが、少々長いので、今回新たに稲村ヶ崎を舞台にした別の短編小説を書いて連載することにします。(内容は『竜の棲む岬』とは違うものです)
  ※2021年10月10日出版しました。コチラです

 新田義貞の渡渉伝説もあれば伝説の大波サーフィン大会もある稲村ヶ崎に、戦争を知らない若者を主人公に据えて、あの戦争への想いを描きました。

かつて、そこには竜がいた』。短編の連載ですので数回で完結する予定、ではおりますが……。

来週、7月30日から毎週金曜日公開。乞うご期待!

【連載小説】かつて、そこには竜がいた(1)はコチラ

ピックアップ記事

  1. 竜の棲む岬
  2. 森園知生の著作ご紹介
  3. 江ノ電鎌倉発0番線
  4. 『金星が見える時』「まえがき」に代えて(1)
  5. 【連載小説】『かつて、そこには竜がいた』全話

関連記事

  1. 1.鎌倉のこと

    「鎌倉殿の13人」関連記事リンク集 みんな武衛だ!

    鎌倉散策のお供にこの記事は、当ブログ記事の中で、大河ドラマ「…

  2. 1.鎌倉のこと

    源実朝暗殺の謎を解く小説『春を忘るな』

    1.源実朝の死の謎建保七年(1219年)一月二十七日、鎌倉幕…

  3. 1.鎌倉のこと

    切通し(4)―巨福呂坂―

     タイトルの絵は「一遍上人聖絵」第五巻第五段、一遍上人が巨福呂坂より…

  4. 1.鎌倉のこと

    切通し(3)―化粧坂―

     化粧坂と書いてケワイザカと読みます。鎌倉七口の中でも鎌倉駅からそう…

  5. 1.鎌倉のこと

    稲村ヶ崎(1) -鎌倉と江ノ島のはざま-

    稲村ヶ崎は鎌倉の前浜(注)である「由比ヶ浜」と江ノ島寄りの「七里ヶ浜…

  6. 代替テキスト『春を忘るな』

    1.鎌倉のこと

    【連載小説】『春を忘るな』まえがき

    ――この小説は、源実朝暗殺事件の真相を解明する物語です――■ 小説連…

  1. 5.著作のこと

    森園知生の著作ご紹介
  2. 1.鎌倉のこと

    源実朝の謎(1) これが実朝の墓?
  3. 5.著作のこと

    ラフカディオ・ハーンの見た鎌倉・江ノ島(総集編)
  4. 2.江ノ島のこと

    江ノ島に架ける橋
  5. 1.鎌倉のこと

    中世鎌倉の港湾遺跡をドローンで空から撮影しました! ―『春を忘るな』の周辺(7)…
PAGE TOP