1.鎌倉のこと

『ひぐらしの啼く時』の舞台(7)― 朝夷奈切通し ―

前回の『ひぐらしの啼く時』の舞台(6)― 杉本寺と杉本城 ― はコチラ


「朝夷奈切通し」といえば鎌倉七口のひとつ。三方を山に囲まれた鎌倉にとって「切通し」は外界との連絡口です。


鎌倉側から入ってすぐの所に建つお地蔵様。浄誉向入という切通の修造を行った僧の供養塔とのこと。


峠の頂にある摩崖仏。いつごろのものか、由来はわかりません。


朝夷奈切通しは、鎌倉から三浦半島を横断して東京湾に出るルートです。奈良時代から、鎌倉へ塩を運ぶ道であり、鎌倉幕府にとっても大型船(唐船)の着岸できる六浦へ出る重要なルートでした。おそらく、この切通しの名は朝夷奈三郎義秀が由来となっているのでしょう。しかし、朝夷奈三郎は、和田義盛の三男で、和田の乱で幕府(北条氏)と敵対した人物です。(和田の乱については『ひぐらしの啼く時』の舞台(2)― 和田塚 ― をご覧ください)

そんな謀反人が、鎌倉幕府にとって重要な幹線道路に名を残しているのはなぜだと思いますか? それは『ひぐらしの啼く時』の物語の中で朝夷奈三郎が自ら答えを示してくれるでしょう。
(2020年4月に当ブログ上で公開した「切通し(1)―朝夷奈―で、切通しの名の由来について考察していますが、『ひぐらしの啼く時』にとって、今となっては少々ネタバレとなってしまいました。それでも「切通し(1)―朝夷奈―」記事内の「うんちく」だけでもご覧いただくと和田義盛、朝夷奈三郎にとって、この道がどういう意味を持っていたかご理解いただけると思います)
 この「朝夷奈切通し」は『ひぐらしの啼く時』の中でも重要な舞台のひとつです。物語の登場人物たちは、この古の道を辿ることで、時を超えて繋がってゆきます。
(『ひぐらしの啼く時』の冒頭部分は、下のAmazonサイトで「試し読み」ができますのでご覧ください)


『ひぐらしの啼く時』コチラ

『ひぐらしの啼く時』ご紹介コチラ

次回は『ひぐらしの啼く時』の舞台(8)― 和賀江島 ―

ピックアップ記事

  1. オリンポスの陰翳 ――江ノ島東浦物語――
  2. 【連載小説】『俥曳き俊輔の逡巡』(全話)
  3. 【連載小説】『かつて、そこには竜がいた』全話
  4. ショートショート『渚にて』
  5. 森園知生の著作一覧

関連記事

  1. 1.鎌倉のこと

    切通し(2)―極楽寺坂―

    今は車も通る生活道路それでも夕暮れ時になると…… 切…

  2. 1.鎌倉のこと

    ラフカディオ・ハーンの見た鎌倉(3)― 建長寺 ―

    この記事は、ラフカディオ・ハーンの見た鎌倉(2)からの続きです。…

  3. 1.鎌倉のこと

    『吾妻鏡』に描かれた三代の源氏将軍

     この記事は、源実朝の謎シリーズの第3弾「源実朝の謎(3) 真相の解…

  4. 1.鎌倉のこと

    2024年 なみおと盆踊り@稲村ヶ崎

    夏の終わりは今年も「なみおと盆踊り」!夏の終わりは、いつもな…

  5. 1.鎌倉のこと

    源実朝の謎(2) 実朝暗殺事件の影に蠢くもの

     この記事は、「源実朝の謎(1) これが実朝の墓?」からの続きです。…

  6. 1.鎌倉のこと

    「鎌倉殿の13人」関連記事リンク集 みんな武衛だ!

    鎌倉散策のお供にこの記事は、当ブログ記事の中で、大河ドラマ「…

  1. 2.江ノ島のこと

    江ノ島に架ける橋
  2. 1.鎌倉のこと

    中世鎌倉の港湾遺跡をドローンで空から撮影しました! ―『春を忘るな』の周辺(7)…
  3. 5.著作のこと

    森園知生の著作一覧
  4. 1.鎌倉のこと

    稲村ケ崎(2) -謎の洞窟-
  5. 5.著作のこと

    ラフカディオ・ハーンの見た鎌倉・江ノ島(総集編)
PAGE TOP