5.著作のこと

「核の傘」とは何か?

核の傘とは?

「核の傘」という言葉があります。
核弾頭ミサイルを撃ち込まれても「核の傘」という大きなパラソルがあって、それを跳ねのけてくれる。

な~んて考えている人がいるはずはないですよね。
では、実際はどんなものでしょうか?

核攻撃の探知

どこからか、核弾頭ミサイルが日本へ向かって飛来してきたとします。
これを探知するのは、米国のミサイル警戒システム(SBIRS)と日本の航空自衛隊の警戒管制部隊レーダーサイト 。これらが連携して「核弾頭を搭載した弾道ミサイルの飛来」を探知します。(ミサイルの弾頭が「核」か通常爆弾かは米国の複雑な技術で判断するそうです)

迎撃

核弾頭ミサイルの飛来を探知したら、日本のレーダー網を統合して軌道を追跡し、PAC-3(地上)・イージス艦(海上)を活用して「迎撃」をします。つまり向かってくる核ミサイルを撃ち落とすのですが、これは日本が自身で行わなければならない防衛です。ミサイルが発射されてから着弾するまでは長くて1時間。北朝鮮から日本への攻撃なら10分です。その間に日本の「迎撃」が確実に実行されなければなりません。言うまでもなく、待ったなしのオペレーションとなります。

ところが、この「迎撃」が「核の傘」ではないのです。そして、この「迎撃」はとても難しい。たとえば、発射された弾頭が複数に分かれ、どれが本当の核弾頭なのか判別できない(まさに忍者の分身の術)など、迎撃を難しくする技術は、次々と開発されています。

反撃の約束

日米安保条約に基づいて、米国は、同盟国である日本に核攻撃があった場合、攻撃した国に「必ず反撃する」という「約束」をしています。この「約束」こそが「核の傘」であり、日本への核攻撃を思いとどまらせるであろう、という核抑止の考え方なのです。

では、この「約束」はどのように果たされるのでしょうか?

米国のミサイル警戒システム(SBIRS)と日本のレーダーサイト が日本への核攻撃を探知すると、米国国家安全保障会議(NSC)が緊急会合を開きます。つまり自動反撃ではないところに注意してください。

米国による反撃

日本政府と協議(EDD枠組み)の上、「反撃」の方向で進めることになると米国での核攻撃のオペレーションが開始されます。

どこの国から発射されたか? 着弾地点はどこか? 弾頭は「核」か通常爆弾か? 総合的な情報が大統領に報告されます。

米国大統領の判断

この反撃オペレーションの中で最も重要なのが、米国大統領の最終判断です。
つまり大統領が「発射!」と指示しない限り報復攻撃(反撃)は実行されません。

さて、ここでとても重要なのが米国大統領の反撃可否判断ですが、これに関わる重要な要素があります。現代の核保有国のシステムは、「核攻撃されたら必ず核で反撃する」という鉄則です。この「脅し」でもある鉄則を厳守しなければ「核の抑止」は意味を成しません。
ということはですよ。米国大統領は、「日本への攻撃に対して反撃してあげる」という「約束」があるので、米国自身が核の反撃を受けるのを覚悟で「発射!」の指示を出さねばならないのです。が……、

本当に発射指示するだろうか? 

ということなんですよ。
「日本への攻撃に対して反撃してあげる」は、あくまで政治的な約束であって、実際にそれを実行するかどうかは大統領個人の判断に委ねられているのです。

さて、現在の米国大統領はトランプ氏です。

彼の思想の中心は「アメリカファースト」です。(自分ファーストと言ってもよさそうですが、まあ、それは置いておきましょう)
その彼が、核攻撃を受けることが必至の前提で、日本のために核ミサイル発射の指示を出すでしょうか?
たとえトランプさんでなかったとしても、ここは非常にシビアな決断になるでしょう。

これが「核の傘」の実態です。決して核の雨を避ける「傘」があるわけではなく、自動反撃でも自動迎撃でもない。「核の傘」とは、あくまで政治的な約束でしかないんです。それはとても不安定で脆いものであることは否めないでしょう。

「だからこそ日米同盟が重要なんだ」とおっしゃる方々もおられるでしょう。わかります。そうかもしれません。でも米国大統領に「命を懸けて同盟国を守る」という硬い信念がなければ「核の傘」は機能しないんです。

「核の傘」をどう考えるか?

米国大統領がトランプ氏でなかったとしても、米国自身が核の反撃を受ける覚悟で、日本のために核の発射ボタンを押すかどうかは、とても難しい判断になると思います。


現在(2026年9月)、日本政府は非核三原則の見直しを行っています。たとえ「持ち込ませず」をどう改めたとしても、「核の傘」の反撃最終判断が米国大統領であることは変わりません。
核兵器不拡散条約(NPT)において、日本は唯一の戦争被爆国として、核兵器の非人道性を訴え、核兵器のない世界を目指す立場をとっています。そのかわりに「核の傘」で守られている、という立場でもあります。しかし、核兵器が存在している世界の中で「核攻撃に対する核による抑止」というものが、いかに脆いものかということも認識しておかなければならないと思います。

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