前回の『ひぐらしの啼く時』の舞台(2)― 和田塚 ― はコチラ
極楽寺の光と影
映画やテレビドラマのロケ地
江ノ電極楽寺駅は数々の映画やドラマに登場してきましたのでご存知の方も多いかと思います。
オッス(勝野洋)とチュー(小倉一郎)。懐かしい! と思う方も多いかと(いや、すでに特定の世代だけ?)
「最後から二番目の恋」
このドラマの撮影には何度か遭遇しました。私は会社から帰宅する時、極楽寺駅で降り、健康のため七里ヶ浜まで歩いて帰っていたのですが、極楽寺駅で降りると、撮影スタッフが改札口で出迎えてくれ「お疲れ様です!」と声をかけてくれました。(番組の好感度アップのためでしょうけどね)
映画『海街diary』にも極楽寺は登場しましたね 。
姉妹の住む、あの梅の木のある家は、おそらく極楽寺でしょう。
極楽寺は地獄谷?
極楽寺は、海の近くでありながら山に囲まれた谷戸です。映画やドラマも、明るい湘南というより、しっとり湿り気をおびた鎌倉の谷戸の雰囲気が物語をせつなく魅力的なものにしていたように思います。そんなひなびた風景も、中世の頃は、鎌倉の辺境にあったことから地獄谷といわれていたとも伝えられています。(その様子は当ブログ「切通し(2)―極楽寺坂―」の記事をご覧ください)
ですので夕刻ともなると……。
駅前の通りも、 こーんな感じに……。
住宅街も……。
江ノ電和田塚駅を発ち、由比ヶ浜、長谷を過ぎるとトンネルに入ります。
ここで『ひぐらしの啼く時』の一節をご紹介しましょう。
江ノ電は民家の軒先をすり抜けるようにしながら由比ヶ浜、長谷と過ぎてゆく。踏み切りの遮断機が立てるのんびりした警報音とともに、鎌倉権五郎景政を祭る御霊(ごりょう)神社の鳥居が一瞬見え、すぐに極楽寺のトンネルに入った。轟音の反響が二人の会話をさえぎる。暗い窓ガラスに肩を並べて座る二人の姿が映っている。それはまるで写真館に飾られたレトロな記念写真のようで、二人はそれをただぼんやりと眺めている。すると窓ガラスに写った二つの影も、まるで向こうの世界からこちらを見つめているかのようだ。
「極楽寺だね。もう遅いから送っていくよ」
トンネルを出るとすぐ祐輔は言った。
暗い窓の外は闇。二人は窓ガラスに映った自分たちの姿を見つめている……。
いや、向こうの世界にいる二人に見つめられているのかもしれない……。
終電間際のホームには人影もない。
二人はホームに降り立った。
改札口を出れば暗い夜道。
「もう遅いから送っていくよ」と祐輔が言ったのは自然なことでしょう。
古のいつのころか、老婆が針を摺っていたと伝わる「針摺橋」。のり子の家は、その手前を折れて山間の小路に入った先……。
暗い街灯の下。
ふたたび『ひぐらしの啼く時』から引用。
「いえ、もうすぐそこだから本当にだいじょうぶ。それより終電になっちゃうわ」
祐輔は家の前までは送るつもりだったが、のり子がかたくなに言うのでそこで別れることにした。ただ、別れぎわ、次は二人だけで会う約束をした。かつてサークルの定例行事だった班別行動を二人でやろうということにしたのだ。次に会うあてもつもりもない「じゃあまたね」ではなく、再び会おうという意味の「また」だった。
数年ぶりの再会だった二人は、また会う約束をしました。二人にとって、この再会とは……。
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